Tokyo City Univ. Dept. of Urban Studies Interior Planning LAB*

 研究テーマ/RESEARCH_1

 
  研究テーマとその分類

本ウエブサイトでは、指導教員のこれまでの所属大学である千葉大学、滋賀県立大学、東京都市大学の全ての研究室での成果を合わせて掲載しています。それらは大まかに言うと、環境心理や空間現象学からデザインを捉えなおす「デザイン科学系の研究」と、人の行動特性から建築計画を科学する「人間空間学系の研究」の2つに分類されます。下記のリストから、興味を引くものを見てみて下さい。

 

 

 
 

 
生活に多様さを与える窓辺のサイズ

 
 平成30年以降の「省エネ法改正」により、住宅の室内外仕上げにより高い断熱性能が求められるようになったが、発泡ウレタンなどを厚く吹き付けるので、壁の厚みが増すことになった。この性能をどんどん上げていくと、自ずと窓枠も深くなるため、いっそのこと、窓枠が一種の「心地よい居場所づくり」に寄与できないかと考えた。写真の建築作品事例では、振り分け梁(スラブの上下に振り分けて着けられた梁)の上端を、ちょうどベンチの高さになるよう設え、多様な、小さな居場所をこしらえた。本研究では、この窓枠の幅寸を決めるべく、実物大模型を作り、被験者所作実験を行った。
 
関連論文:池田綾子・高柳英明他、新たな「居場所」を形成しうる「窓辺」と所作の連関についての研究、日本建築学会関東支部研究報告集(84)、pp.573-576、2014.2(2014年2月、日本建築学会 第84回関東支部若手優秀研究報告賞受賞/AIJ 84th Kanto Branch Research and Study Award)
 

上掲写真クレジット:太田拓実写真事務所

作った窓枠幅は900、1250、1500mm。木軸下地にコンパネで枠ごしらえをした原寸大模型である。

3通りの窓枠模型を使って、大学学園祭の来場者に対し、建築体験を兼ねた被験者実験を行った。手前にいるのは調査員の学生である。

各窓辺模型の枠内で、小型ゲーム機器・お菓子・お茶セット・オセロなどを手渡し、1ないし2名がどんな生活所作をするのかを観察。503通りの所作パタンが看取され、窓枠幅ごとに特徴的な出現所作が見られた。

例えば1250mm幅では、1名より2名利用が多く、更に互いに違う時間の過ごし方をするケースが多く見られた(1500mm幅との比較)。2名の場合は集合のサイズが小さく納まり、かえってその方が心地が良いという自由回答も得られた。

 
インテリアコーディネートと関係が深い「インスタ映え」

 
 インテリアコーディネートの基礎知識として「カラースキームにおけるBMA比率」というものがあるが、これを詳しく説明すると、インテリア全体をB:ベースカラー、M:メインカラー、A:アクセントカラーに分け、{B : M : A}={75 : 25 : 5}の比率に近づければ、誰もが好ましく思うコーディネート結果になるのである。
一方、写真投稿型SNSなどでは、いわゆる「映える写真」がもてはやされているが、皆が「映えている」と認める写真(インテリア空間+手元で見せるメニューや飲み物を含めた撮影画像)及びその撮り方には、上記のカラースキームの安定比率が関係している事が分かった。またそれらに付随してツイート・リツイートされる印象や感想を分析することで、被写体空間のイメージスタイルに対する感性反応と、BMA比率を関連付けることもできる。この連関を用いることで、写真映えの効果が高いインテリアコーディネートの一般解が得られる。 

関連論文:塚田すみれ、Instagram®︎の投稿画像の分析に基づくカフェ空間デザインの支援手法に関する研究、東京都市大学都市生活学部インテリアプランニング研究室卒業研究論文、2017.3


SNS上で「リツイート・いいね」回数が多い「映え写真」と記事内容のうち、手元の商品やメニューと背景のインテリア空間の両方が映り込んだものを抽出し、ベースデータとした。

カラースキームBMA比率を抽出画像の画像解析から算出。各空間要素へのB、M、A当てはめ判定については、自動化は困難なため人の目にて行った。

得られた画像毎に、HSV(色相・彩度・明度)を軸とする彩色3次元マッピングデータに変換し、色相差・トーン傾向・彩度分布等を定量的に把握。

手元被写体が大きく映されている場合を除き、安定的なBMA比率が見られたが、色相差分・トーン傾向においては、語句による感性反応に一様に連関関係が見られた。

 
信楽焼の廃材を活用したインテリアエレメント

 
 
 信楽焼は大業も小物も、土の質感を活かした表情豊かな伝統工芸であるが、焼成過程で破損する等、廃材の活用方法に苦慮している。そこで本研究では、信楽焼の材料物性に着目し、その廃材の再利用と用途模索をすべく研究着手に至った。「たぬきの置物」等で親しまれている信楽焼は、1) 荒々しい土質、2) 耐衝撃性・耐水性に富み、3) 素材自体が赤茶けた色味を帯びている事などから、国内では水道管や水瓶などに使われてきた。近年、信楽焼の市場規模が縮小しており、伝統工芸の火を絶やすことなく、同時に廃材の利活用を進めるべく、本研究では、新たなインテリアエレメントを提案することとした。
「洗出し」仕上げとは、左官仕上の一種で、砕石や砂利などを骨材(種材)とし、モルタルにて下地に定着させる方法である。西欧では「ZEN STYLE」として現代的なデザインエレメントに取り入れる傾向がある。

関連論文:小檜山 結花、信楽焼の材料物性に着目した陶磁器の廃材利用を
促進させるインテリア・エレメントに関する研究、東京都市大学都市生活学部インテリアプランニング研究室卒業研究論文、2020.3


洗出し仕上げは、床に施す事が多く、通常骨材は「玉砂利」を用い、モルタルで骨材を定着させながら、表面を「洗出す」ことで素材の持ち味を表出させる(例:青緑玉砂利、プレコ洗出し)。

荒々しい土質、耐衝撃性・耐水性に富む点、釉薬面の多彩な表情と艶を楽しむべく、「洗出し」の手法を模索する。写真は窯元より提供を受けた骨材(廃材)。

左官作業としての旧来の「洗出し」に加え、骨材の「浮き」をどう押さえ、釉薬面の表情付けをするのかを多種のサンプルにて試行。

最も評価の高かった仕上げ方法をインテリアエレメントとしてデジタルイメージングした。モルタル部分の低艶の落ち着いた表情をベースにしつつ、採光等による信楽焼釉薬面の反射艶が心地よい。

 
生活にここちよい天井のかたち

 
 これは、「空間の大小」と「居心地のよさ」に着目したデザイン研究である。吹抜け空間など天井が高い空間は、開放感と同時に楽しい気持ちを味あわせてくれる。一方、ロフトや天井が低い空間は、窮屈だけれども、何故か落ち着く。天井の高い・低いには、それぞれの魅力があるが、それらが同時に感じられる天井のデザインはないのかという問に答えを見つけるべく、ロジッドモデルを用いて定量化と心地よさの被験者評価を行った。
また本研究は、熟練した建築デザイナーが直感的に操る「天井を絞る」「天井に段差をつける」というデザイン行為に対し、各々のゾーンの気積比を「1 : 4」に近づけると最も効果的であることも併せて明らかにした。広いリビングルームを吹抜けにしたら、ダイニングやキッチンスペースは天井高を下げ、かつ気積はリビングの1/3が適切なバランスであるという事である。

関連論文:小川智哉・武藤浩憲・高柳英明、天井高の異なる連接空間の空間認知に関する基礎的研究、日本建築学会大会学術講演梗概集E-1分冊,pp.49-50、2011.8、および木原己人・高柳英明;天井高の異なる連接空間の空間認知に関する基礎的研究、日本インテリア学会論文報告集、第30号、pp.77-82、2020年3月 (PDF)

1/2スケールの模型実験ルームを構築し、被験者の感性反応を調査した。写真手前に座っているのが被験者。スケール感覚の補正のために、同じく1/2スケールの椅子や家具を配置。

理想的な「異なる高さの天井寸法」をパターナイズし「大→小」「小→大」の2方向から空間を視覚的にみせて環境心理テストを行った。

ロジッド数理モデルによって感性反応を定性化し、異なる天井高毎の「心地よさ」の極大を推定した。

天井高の差異差分ごとに見ても、最適な違いが見出された。これに大小空間の気積の比率との連関も同時に示された。

 
多機能ミーティングテーブルを自作する

 
 ゼミをもっと活発にしたい想いから、研究室のテーブルを学生メンバーが設計・製作した。「ワークトップに必要なものは何か」から話し合いを始め、人と人の距離感や、シェルフ・収納とのバランスを考慮しつつ、設計を進めた。このワークトップは、固定本体テーブルと、小さな可動式六角形テーブルの2つの要素から構成されており、可動側を動かし組み合わせることでミーティングの形態を変容させられる点にある。小グループ作業や、全体ミーティング、プレゼンなど、多様なゼミ・シチュエーションに対応可能。また「人間集合の寸法」「対人間距離」の取り方に重点をおき、活発で自然に意見交換・意思疎通ができるような環境を創り出した。
 
(社)日本インテリアプランナー協会・2016年度IPCコンペ展示作品

関連論文:畔田麻理子・山口有次・中村良三・高柳英明・伊藤倫子・渡辺仁史、グループ集合における対人距離に関する研究(その2)、日本建築学会大会学術講演梗概集、E-1分冊、pp-1045-1046、2000.9

大小の組み合わせで出来上がる各パターンは、対面・斜交い着席者とも非言語的な意思疎通を可能にすべく、直径3mの円環領域が複数同居できるようにした。声や表情、仕草などが伝わる事は、協調作業時には不可欠である。

ワークトップを囲んで座った時、発話しやすく、無理のない対人間距離を確保すべく、着座想定着座5〜16席とし、机上作業・PC操作等も自由にできるよう個人領域600ミリ幅確保。

部屋の中心にこのワークトップを据え、多機能な使い方をサポートするのが窓下壁面凹みにフィットした書棚・物入れ。これも学生が丸鋸・インパクトを用い、施工図から集成材・MDFの切り出し、ダボ打ち、台輪作りも行った。

制作後3年が経た様子。29名の学生と教員が入れ替わりで調査研究・デザイン作業・ミーティング等同時並行で使用している。当学部は理系ではないので、学生の演習室つまり居場所がないぶん、ここがラボメンの秘密基地。

 
「あかり」コントロールで睡眠の質を高める

 
 ベッドや寝具だけでなく、安眠効果を高めるインテリア要素として着目されているのが「寝付き前のひととき」を過ごす際の、照明の「明るさ」コントロール。この研究は、就寝前の照度低下時間の長短が、睡眠の深浅にどんな影響を与えているかの臨床実験を行ったものである。点灯初期の照度から、徐々に暗くしていく時間を60[分]とることで、就寝中の「覚醒時間の減少」と「深い睡眠の増加」が看取された。また、1) 通常の室内照明よりも照度が低い時、眠気を促す傾向が高いことと、2)睡眠導入時の活動を限定する経過時間として適切なことが深い睡眠につながったみる事ができる。 

関連論文:久米村秀明・高柳英明・杉本志織;睡眠前の照度低下時間の長短が睡眠深浅に与える影響に関する研究、日本インテリア学会論文報告集、第30号、pp.97-102、2020年3月  (PDF)

時間経過に応じて照度を減ずる調光装置を用い、ベッドサイドに置く「枕元照明」をドーンライトに仕立てた。

この研究の与件背景としては、人間が本来持っている「サーカディアンリズム」の狂いを如何にして再調整するかである。特に現代の高ストレス社会では不眠になりがちである。

ベッドに入って実際に寝付くまでの「寝付きの時間」をどれだけ確保し、ドーンライトによる眠気促進をするべきなのかを調べる調査計画をたてた。

睡眠実験時は、被験者にウエアラブル型睡眠計測計を身に着けさせ「寝付き前〜就寝中〜起床」に渡って「心拍数」や「眠りの深浅」の時間遷移を計測し分析を行った。

 
ダイニングを重視した「新LDK」発想

 
 動画サイトやスマートフォンの普及に伴い、家庭での「テレビ離れ」が顕著だが、同時に、家族揃ってリビングや居間でくつろぐ事も少なくなったと実感される向きも多いのではないだろうか。一方ダイニングルームは、食卓としての機能以外にも、子供の勉強机代わりになっていたり、ちょっとした家事雑事のデスクも兼ねていたりと、リビングルーム以上にフレキシブルに、かつ多用されている。本研究は、そうした「新LDK」のあり方にフォーカスし、ダイニングルーム重視型の住宅プランニングに対する居住者意識調査を行った。

関連論文:目羅真弓・高柳英明:ダイニング重視型の家族団らん空間に関する研究、東京都市大学都市生活学部卒業研究、2018.3 (PDF)


我が国の「ダイニング文化」は、戦後復興と公営住宅標準設計に始まる。その後日本住宅公団が進めた「ダイニング・キッチン」により、家庭内の団らん空間が徐々に形成され、生活水準の向上が図られた。

本研究は、昨今の都市生活の変化に併せた「ダイニング重視型」の3つのモデルプランを提示し、被験者家庭の家族構成に対応させ「家事・会話・食事・勉強・作業・休憩・用達」などの行為についての感性反応を調査した。

「会話を伴う家族の団らん」については特に、リビングルームよりもダイニング領域の伸展に伴って場所移行の傾向が見られた。またキッチンワークトップとダイニングテーブルが一体化した方が、行為の多様性が期待できるとの回答傾向が見られた。

「新LDK」発想では「会話環」を中心に据えた居場所の確保よりも、家族が互いに見える状態であればよいとされた。また家族が各自思い思いの過ごし方をしつつ、互いにノンバーバル・コミュニケーションが可能であれば、団らんの空間として最適ともされた。

 
昇降しやすい階段手摺のデザイン

 
 この研究は、腰を痛めた人が大学構内の階段を昇る際「1段目」を特に辛そうにしていた様子を観察した本研究室修士の学生が始めたものであり、手摺の始まりの位置や形状と、1段目の段端との相対的な関係を整理することで、もっと昇りやすく出来ないかという解決意識から着手に至った。人間のシルエットを読み取る画像認識型のモーションキャプチャを用い、被験者の腕・肩・腰骨・膝などの動きをデジタイズし、重心位置のぶれと挙動から、最も負担の少ない結果をきたす手摺形状を特定した。階段の蹴上げ(けあげ)寸法や、勾配の適正値などは多く研究されているが、日頃の観察を元にし、手摺の形から昇降負荷を科学した、本研究室ならではのテーマだと言える。

関連論文:酒巻大介・所洸太・木原己人・高柳英明、ビデオセンシングシステムを用いた階段昇降時の人体挙動計測とその評価 -階段の手摺形状と局所重心移動の時系列解析-その1、日本建築学会大会学術講演梗概集E-1分冊,p.625-626、2012.9


塩ビ管(VP-50)を熱処理にて曲げ加工した手摺を、金属固定金具で既存手摺に固定。被験者が昇る際の動画像をモーションキャプチャで録取し、リアルタイムでデジタイズ。

実験空間の概要。三脚上の物体がモーションキャプチャ本体。写真の手摺モデルはストレート段端延長型を取り付けてある。

建築法規上、手摺の最低設置高さが決められているが、その条法範囲内であれば多様な形状が考えられる。2段目にてデントしているものは、1〜2段目への体重移動の際に有効といえる。

6タイプの手摺モデル毎に「上半身」と「下半身」のブレを数値抽出し、この数値が小さく、かつ昇降運動のロコモーションを乱さないものが最適といえる。

 
「窓には疲労回復性能があるか?」研究

 
 近年では窓サッシの断熱・密閉性能に目覚ましい向上が見て取れるが、窓枠で切り取られた外部の風景に見とれたり、様々に色づいた陽の光などに癒やされたり- 窓には通風や採光などの他に、人間の感性に働きかける作用があると思われる。そこで本研究は、インテリア空間に対していかなる寸法の窓がそうした人間の感性モデルに強く連関しているのかを調べ、設計技術にフィードバックすることを目的としている。住空間においては、そこでの作業の質や効率の向上を目指すのではなく、むしろ「いかに効果的な休息を提供できるのか」や「いかにして蓄積されたストレスや疲労を効率よく解消させられるのか」といった逆の性能が求められるべきであり、従来の空間評価概念では扱われていない住空間本来の特性としての「休息効果」に着眼し、ごく客観的な被験者の生理状態の実験測定を基にした評価基準を策定することが必要とされる。 また近年のライフスタイルの変化に対応した良好な住環境を提供すべく、住宅の外的環境との接し方、特に窓や開口・スリット等を用いた自然光の採光方法に関し、特異な形状・仕様、形態の実験的な住宅設計事例が多く見られるようになったが、これらの特異な採光方法と住空間の性能を客観的に評価しうる基準整備が急務である。よって本研究は、住空間の「休息効果」に関わる性能を、空間の疲労回復性能と呼び、各種の生理計測手法を駆使することによってその定量化を試みる。

関連論文:酒巻大介・所洸太・木原己人・高柳英明、ビデオセンシングシステムを用いた階段昇降時の人体挙動計測とその評価 -階段の手摺形状と局所重心移動の時系列解析-その1、日本建築学会大会学術講演梗概集E-1分冊,p.625-626、2012.9


自立接合式のユニットパネルにより四方壁面と天井面を有する単純形状の実験閉空間を構築。

壁・天井面については数種類の仕上色を、床面についてはカーペット・フローリング等、材質を異とする仕上材を適用し、また閉空間の広さに応じたイス・ソファー等のしつらえを用意し、可変空間条件とする。

実験被験者数は12パタンの可変条件に対して各10名、合計120 名、被験者には直前まで別に用意した執務空間(大学内会議室などを利用)にてパソコン操作や文書作成といった定型化したパフォーマンステストを30分間行わせたのち、実験環境内に着座させ、自然にくつろいだ姿勢を取らせたまま30分間休憩させる。

その後、再度別室にてパフォーマンステストを行わせる。その間下記のA~Cに示す3種類の生理状態の計測を実施し、この要領で執務-休憩-執務の状態変化にみられる疲労蓄積・回復度合いの推移を計測・抽出する。

 
「テレナーシング」できる高齢者住宅の立地与件を知る

 
 「3世代同居が当たり前」だったのは昔の話。現代社会では「核家族化」「都市部人口の集中」などを背景に、親世帯・小世帯の別居が多くなっている。お互い健康なうちはよいが、自分の親や親夫婦が高齢になるにつれ、日常的な見守りだけでなく、ちょっとした介助・介護などが必要になる時、離れて暮らしていると心もとないうえ、子世帯にとっては会いに行く時間も手間も増える。本研究は、そうした別居の介護「テレナーシング」を無理なく継続しうる物理的な距離を、「時間と費用」の観点から理想値を見出そうというものである。
 また昨今利便性が向上したネットワーク通信型IoT機器などのスマートデバイスを介助に併用することで、この「時間と費用」をどれだけ減らせるかを、関西圏・関東圏の被験者回答から導き出し、両圏域の比較も同時に行った。(尚この研究テーマは、文部科学省科学研究基盤研究(C)(2017-2019 年度、研究代表者:高柳英明) に採択されたものである。

関連論文:Hideaki Takayanagi, Tatsuto Kihara, Yosuke Kurita, Kazuhide Kawaguchi, Hidetoshi Kawaguchi, Takaaki Furukawa, Takuhi Ono and Shougo Yamada, A Fundamental Study on Multi-agent Pedestrian Model Based on Risk Avoidance Behavior during Road Blackage and Evacuation Simulation of Regional Urban Disaster、Journal of Civil Engineering and Architecture, Volume13(#137), No.4, pp.219-237, Apl.2019,Doi:10.17265/1934-7359/2019.04.001
(Online Paper_1) (Online Paper_2)


「高齢者テレナーシング」とは、本研究で提唱している造語であり、離れて住む親や親夫婦に対する、日常的な見守りや安否確認も含んでいる。

高齢の親・親夫婦が居て、目下介助・介護をしている被験者を始め、これから介護者になるであろう一般被験者も含め、390名から「理想の訪問頻度」「理想の移動時間」「理想の移動費用」に分類しサンプル採取。

首都圏・関西圏とも、中心市街地に居住する被験者を選び、居住地を起点に理想の離隔道のりから、「ここまでなら離れて暮らせる」地理的範囲をプロット。

IoTスマートデバイス併用下での補正値を含め、時間-費用曲線としてモデル化。これを踏まえ「どこまで距離を離れても大丈夫そうか」が推定できる。

 
ハムストリングを鍛え、腰痛を防止するバスタブのデザイン

 
 住宅の浴槽や衛生陶器は、使い勝手や合理性を考え抜かれた工業製品であるが、毎日の入浴の時間を健康維持に活かせないかと考えた学生が、ハムストリング(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)を効果的に鍛錬できるバスタブのモックアップを自ら制作し、その効果測定を「DSPワイヤレス筋電センサ」と「筋電値計測システム」を用いて検証した。
下肢筋肉量は、20代後半から加齢と共に減少するため、若年のうちからこうした鍛錬が必要と考える。また入浴時間は通常、15分程度と短いが、この短時間であっても上記筋組織を効果的に鍛えることで、腰痛や全身筋力の低下などを未然に防ぐことができる。

関連論文:小林亜衣・高柳英明:ハムストリング鍛錬と身体機能向上を促す浴槽デザインの提案、東京都市大学都市生活学部卒業研究、2018.3


当初の研究動機は、スマートエイジング住宅の浴室環境を見つめ直すであったが、身近な高齢者が腰痛に悩まされている実態から「ハムストリング鍛錬」を促進させる浴槽の形状模索が研究目的となった。

ある程度簡略化した実寸モックアップを作成すべく、入浴姿勢・ハムストリング伸展姿勢などを考慮しながら、まずは理想的な浴槽形状のデジタルデータを構築。

木軸・ダンボール・プラダンなどを用いて、浴槽モデルの実寸モックアップを作成。被験者に浴槽を使わせ、実際にハムストリング3筋の伸展姿勢をとらせる。被験者の身体には筋電センサを取り付け、筋電図信号をPCにて解析。

一定時間の入浴の後、筋電図データから一般浴槽と本研究の浴槽モデルで効果の有無あるいは強弱を検証する。一般的に平均入浴時間は15分と短いものだが、毎日の積み重ねが、いざという時の腰痛防止に繋がる。

 
「スキップフロア」形式は住空間として機能するのか

 
 連接した居室空間をゆるやかに繋ぐ、或いは分節する手法として床面段差を利用したスキップフロアという計画様式がある。これがもたらす視覚的・動線的な連続性と不連続性については、体験者の印象や空間認知特性として定量化する研究事例があるが、対人距離や対話などによるコミュニケーション度合いをリサーチし、その有用性の検証に至っている事例はない。そこで本研究は、段差のある居室即ちスキップフロアのある連接空間を対象とし、被験者の対人位置・距離とバーバル(対話型)およびノンバーバル(非対話型)コミュニケーション伝達度合いについて、段差パターンごとの実測値をもとにその有用性を検証することを目的とする。
 

関連論文:前田英倫子・菅原将太・柴原寛子・高柳英明、段差のある居室内でのバーバル/ノンバーバルコミュニケーションに関する研究-、日本建築学会大会学術講演梗概集E-1、pp.631-633、2015.9


写真は被験者実験を行うための、段差のある連接空間フロアI・II(段差高hはそれぞれ450・900[mm])である。生活の場を想起しやすいよう、床上にパンチカーペットを敷設、靴を脱いだ状態で被験者実験を行った。

二人一組の被験者に対し、相手との「会話を交えた・交えない」コミュニケーション伝達度調査を行った。実験内容としては、1)両者の独立着座、2)片方が着座・片方が自由姿勢、3)左記の逆、の3パターンについて、それぞれ2種類のフロア段差をつけて試行。

二人一組の30組の被験ペアのデータを平面プロット。各ドット寸法は簡単に言うと「コミュニケーションの伝達度」である。段差が大きい場合は特に、会話を伴わない「ノンバーバル・コミュニケーション」時に、互いの表情やジェスチャーが伝わりにくくなる点で強い傾向が見られた。

段差高が大きいケースでは、段差部から離隔した位置の方が評価が高い傾向にあった。また段差高が小さいケースでは、段差部付近の位置に高評価プロットが集中していた。画像はこの結果を3軸プロットしたものである。

 
デザイン科学セミナー「メディアミクス2.0」

 
 SNS、ネット通販、電子広告、AR ゲーム、BIM による空間デザイン、テキストマイニング etc...、現代の都市生活は、多種多様な情報通信・ 解析技術・ビッグデータ活用技術よって質の高いサービスを享受するに至り、またこれらの個々の技術水準は飛躍的に進化し続けている。しかし一方で、個別に発展を遂げるこれらの技術を「複合させ」「相乗させ」「創発させる」新たな知恵と工夫に窮しているとも言える。そこで本セミナーでは、建築、インテリアデザイン、空間情報学、電子広告サービス、情報コンサルティング、解析技術の各分野の専門家を招聘し、新たな都市生活の「価値」と「質」を創造するモデルスキーム「メディアミクスと空間デザインのみらい像」について議論を交わした。

主催:都市生活学部インテリアプランニング研究室/開催日時:2017/2/17(Fri.)14:00-18:00/会場:東京都市大学 等々力キャンパス2号館4F 242教室/〒158-8586東京都世田谷区等々力8-9-18

当日テーマ:「テクノロジーミックスが生み出す新たな表現開発の可能性」「2030 年代の都市生活とは? 」「どこまで追いかけられる?インターネット広告の今」「建築と戦略コンサルティングと AIはつながるか?」

昨今は「共感」「多様性」に加え「実感主義」の時代であり、そうした時代のうねりの中での各専門立場から、メディアミクス2.0時代の商業空間・サービス施設へのアイデアや示唆が多数示された。

当日テーマ関連資料

当日会場の様子

 
街路樹の植え方から「風の道」をデザインする

 
  昨今の地球温暖化対策や環境負荷軽減に加え、東日本大震災をはじめとする天災発生下での異常時・非常時における省エネルギー消費を目指した技術的取り組みが各分野から行われている。省エネルギー社会の実現に対して、夏季の日中における電力消費量の低減が須要的かつ効果的な課題であり、市民の都市生活レベルでは困難な巨視的かつ面的な対策において地理的特性・自然資本を利活用した環境共生型の都市・建築計画が求められている。
本研究では、滋賀県大津市都心地域を対象とした風環境シミュレーションを通じ、夏季の利風効果を有する「風の道」創造に向けた街路樹の植樹デザインにおける風環境の検証を行うことを目的とする。
 

関連論文:高柳英明・木原己人・栗田陽介、滋賀県大津市における地表面温度を 低減する「風の道」創造に向けた樹木-風環境シミュレーションと緑化 計画・植樹方法の検討、日本建築学会技術報告集/AIJ Journal of Technology and Design、第20巻44号、pp.251-257、2014.2


滋賀県大津市駅前通りの約1300m圏内は、琵琶湖湖岸への緩斜面地形と、湖陸風と呼ばれる特異な微弱風・季節風を有していることから、自然の利を活かした「風の道」確保に適している。

当該地域の風況データと都市模型を用いた風洞実験から、シミュレーションの初期与件を得る。なおこの模型は、正確な高低差を再現したコンタおよび縮尺建物群より構成されている(縮尺 1/800、実寸で直径 1.6m)。写真は風洞実験に用いたチャンバー。

実地調査によるパラメータから、対象街区に植樹されている A)イチョウ、B)クスノキの2つの樹種について、植物樹木モデリングプラットフォームにより、3次元データ化と風圧に対する拮抗属性・透過属性等の付与を行った。

植樹配置を変化させ、中通りから筋道側への通過風の強度を流体シミュレーションにより可視化解析した。筋道左右の植樹配置により、最も効果が現れた試行サンプルについて、更に街路樹の固有値である「樹高」「樹冠(林冠とも言う)」を変化させ、通風効率の数値評価ができた。